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[04-00]


 気怠い授業と地獄の特別追試、ついでに憂さ晴らしの地下攻略を続けること数日――ようやく五稜郭高校は終業式を向、俺にも夏休みがやってきた。もっとも、例の事件で特別追試を受けることになった面子は、終業式後に答案用紙の返却が待っていたため、今もこうして教室に残っているわけだが。
「じゃあ、返すぞぉ」
 全部の答案を預かってきたワカさんが地獄の窯を開けた。
「まず藍沢(あいざわ)ぁ」
「はーい……ぐわぼっ!」
「よーし、次は宇喜田(うきた)ぁ」
「うぃーっす……あばっ!」
 出席番号順に名前を呼ばれた連中は、ひとりずつあまりの点数に悶死していく。
 というのは冗談で。
「次は……久賀(くが)ぁ」
「へーい」
 俺は少し痛む左手首をさすりながら席を立った。
 教壇に立つジャージ姿のワカさんは、苦笑まじりに答案用紙の束を突き出してくる。
「中間の時も言ったが……おまえ、まともに勉強してないだろ?」
「してますよ」
「嘘言うな」
 俺の伸ばした右手を、ワカさんは答案用紙でペシッと叩いた。
「やればできるんだから、少しやったらどうだ? 今回も全部、赤点ギリギリだぞ」
「えっ!?」
 ギリギリってことは……赤点がひとつも無い!?
 驚きながら答案用紙を受け取った俺は、その場で全部の点数を確認した。
 どれも50点以上。
 ちなみに最高得点は数学の61点。最低得点は現国の53点だった。
「よしっ、赤無しっ!」
「喜ぶポイントが違う」
 ワカさんは身を乗り出しながら、俺の頭をペシッと叩いた。
 笑いが起きる。
 ふん、笑いたければ笑え。今なら許す。これで俺は、夏休み中の補習を受けずにすむんだからな!
「おーっ、すげーっ。見事すぎるギリギリだな」
「なんだよ久賀ぁ。おまえも補習仲間だろぉ」
「補習はいいぞー」
「こっちゃこーい、こっちゃこーい」
 席に戻る途中、妖怪“補習生徒”がまとわりついてきたが、軽くあしらっておく。
 という感じで。
 ようやく俺にも夏休みが訪れた──はずだったのだが。





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LOG.04 " BUCCANEER "





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